新宿・シネマスクエアとうきゅうで「16歳の合衆国」

mike-cat2004-08-18

製作は「アメリカン・ビューティー」のケヴィン・スペイシー
ガールフレンドの弟で、身体障害者のライアンを、突如刺し殺したリーランド。
事件について口をつぐむ16歳は
「どうせ、みんな理由を求めているんだろう」と逆に問い掛ける。
リーランドのこころに、いったい何が起こったのか…



もちろん、サスペンスとか、ミステリーではない。
少年犯罪の「心の闇」にメスを入れた、社会派映画でもないと思う。
(監督はそういう意図を持っている、とパンフにあったが)
美しい音楽と映像で描いた、16歳の心象スケッチ、みたいなものだろうか…


この映画で、少年犯罪のどうのこうの、を語ることも可能とは思う。
だが、それを考えるとあまりに加害者寄りの描写に過ぎるし、
この映画で語られる内容は、なんの解決にもなっていないんじゃないか、とも感じる。
あまり、この問題について考えすぎてしまうと、
映画の中のリーランド同様
「背後に潜む悲しみを見るか、すべてにこころを閉ざすか」
思考の袋小路に入り込み、抜け出すことができなくなる。


だから、そういう社会問題について、一切の議論を省いたとき、
この映画のよさ、が見えてくると思う。
とにかく、主演のライアン・ゴズリングがいい。
ドニー・ダーコ」でジェイク・ギレンホール
「カラー・オブ・ハート」でトビー・マグワイアを観た時に通じる、
「この俳優、絶対ブレイクするな」と思わせる輝きを感じた。
ドニー・ダーコ [DVD] 「カラー・オブ・ハート」ASIN:B0002L4CME


犯罪そのものは、残酷だし、最終的に明かされたその「理由」には傲慢さすら漂う。
だが、ゴズリングの存在感は、それを越える繊細さと透明感で、
哀しみに満ちた世界との接点に苦しむ16歳を描いてみせる。
冒頭、リーランドがつぶやく。
「あの日のことは覚えていない……
5歳の頃に食べたアイスクリームのことは覚えているのに……
肝腎なあの日のことは思い出せない」
この数十秒で、一気に映画の世界に引きずり込まれた。


脇を固める俳優陣も、豪華そのものだ。
矯正施設でリーランドと出会う作家志望の教員にドン・チードル(「トラフィック」)
リーランドの父の有名作家にケヴィン・スペイシー
ほかにも、レナ・オリンジェナ・マローンらが顔をそろえる。
夏休みの大作、話題作が並ぶ中、かなり地味な印象もあるが、
観て、絶対に損がない、いい映画だったと思う。ちなみに音楽&映像も◎。


あ、そういえば、途中こんなシーンがあった。
バーで時間をつぶすリーランド父に、矯正施設教員がインタビューを試みる。
独りバーで、酒をたしなむスペイシーがおもむろに
「僕がホモじゃないことは分かっただろ?」
ケヴィン・スペイシー、製作兼ねてるからって、ちょっとふざけすぎ…
ホモ疑惑、解消したいのか、煽りたいのかどっちだ?