17歳の気分に帰る「ガールズ・ブルー」

mike-cat2004-08-13

ひさしぶりにキュンとした気分になりたくて、
あさのあつこ「ガールズ・ブルー」を読む。
17歳になったばかりの理穂、
高校野球の有望選手を兄に持つ如月、
病弱だけど、意思は誰よりも強い美咲、
理穂に想いを寄せる如月の兄、睦月の青春を描いた日常クリップ。


描かれているのは、あの頃自分たちも抱えていた「取るに足らない」悩みだ。
ホントは「取るに足らない」わけじゃない。その時、その時切実だったのに、
年月が過ぎて、その気持ちを忘れてしまうと、
「あの時は、あんなことで悩んでいたんだ(笑)」になる。
そんな、忘れてしまった気持ち、を、ヘンに美化することなく、ていねいに描写している。


忘れてしまった「想い」はさまざまだ。
「みんなが期待する美しい物語には、嵌め込まれたくない……
他人の物語の中で生きていくことだけはしたくない」
「あたしも綾奈も勉強は嫌い……でも、自信はあった、何とかやっていけるという自信……
なのに、あの日の綾奈は心細げで自虐的だった。……
たった一日の一夜の一時間の間に何度も揺れ惑う」


気持ちをうまく整理しきれないもどかしさや、
「何かが違う、何か居心地が悪い」という世界への違和感。
そんな気持ちをもう一度体験させられる。
胸の痛くなる、でも読み進めずにはいられない物語。
小説なら、佐藤多佳子「黄色い目の魚」や、森絵都「永遠の出口」
黄色い目の魚 永遠の出口 ゴーストワールド [DVD]
映画ならテリー・ズワイコフ監督、
ソーラ・バーチスカーレット・ヨハンソン主演の「ゴーストワールド」と
相通じるテイストを持った作品だ。
17歳とは関係ないが、
年老いた飼い犬、染子(名前はちょっと、なぁ)のシークエンスでも、
またも込み上げてきてしまった。
本の厚さ自体は短いし、あっという間に読み終わるのだが、
こころにズンズン響いてくる分、実質のボリュームは十分。
ミステリーとかだと、次の本をすぐに読みたくなるが、
この作品を読んだ後は、余韻に浸りたくなる。
ちょっと違う種類の満腹感が感じられる作品だ。


しかし、この年頃を描いた作品とかって、同じ年頃の時は嫌いだったな…
何か、見透かされているような感覚になってたのかも知れない。
こういう小説を楽しむようになった=歳を取った、なのか。
ううん、いい小説を読んだのに、複雑な心境だ。


映画は柳楽優弥のカンヌ主演男優賞受賞で話題の「誰も知らない」
観ようと思ったら、何と開始一時間前に満員札止め
そこで、お盆と気付く。そういえば電車空いてた…
しかし、お休みの朝から「誰も知らない」はどうなんだろう。
確か、実際にあった?育児放棄?事件のはず。
実際の事件は、かなり凄惨だったと聞いているし…