ボリューム不足がもったいない「僕たちの戦争」

荻原浩僕たちの戦争

僕たちの戦争

僕たちの戦争

米航空機テロの起きた2001年9月に生きる、半端サーファー、健太。
敗戦の色濃い1944年8月に生きる、見習い飛行士、吾一。
姿形がそっくりの二人の19歳がタイムスリップで入れ代わる設定の、青春ドラマだ。


それぞれ送り込まれた時代に戸惑いながら、二人は成長を遂げていくのだが、
この著者独特の、三人称と一人称が入り交じる文体と、コメディセンスが、
けっこう定番の設定のストーリーを、ぐいぐい読ませる作品に仕上げてる。


話の中心となるのが、健太の恋人、ミナミとなる。
健太と何かが違う吾一に戸惑いながらも、二人の恋を育もうとするする姿なんか、
すごくかわいいのだが、まあ、好みにもよるかな、と思わせる描写も。
いまいち、人物造型が足りないな、という感もある。
それは健太&吾一にもいえるのだが、
この設定だったら、倍くらいボリュームを使って、
もっとたっぷりとドラマを描いたらいいのにな、というのが一番の感想。
おかしくって、切なくって…は、荻原浩ならではの味は十分出てるから、
よけい「もったいない」と感じてしまった。


しかし、現代に迷い込んだ吾一が、
少年御用達(?)えっち雑誌「デラべっぴん」見てびっくりしてるのとか、
ヘンにリアルっぽくて笑ってしまった。
あ、いかん。きょうは下ネタで始まって、下ネタに終わってしまった。
何かなぁ、そんなつもりはなかったのに…