遅ればせの受賞祝い

mike-cat2004-08-11

祝! 直木賞ということで、長い間本棚に積んであった
奥田英朗「延長戦に入りました」を読む。
祝! とかいって、もうけっこう経ってるな… 
それに奥田英朗は僕にとって勝手に好きな作家なだけで、何の関係もないし。


スポーツが題材ということで、読み出す気にあと一歩なれなかった。
大学でスポーツ学専攻、仕事もスポーツ報道、となると、
どうしても余分な知識と思い入れが混ざって、素直に読めなくなる。
「えー、それは知らないだけじゃない」とか、「それはちょっと、勘違いしてるな」とか、
勘違いしてるのがこちらの可能性も高いが、単純に楽しくない、のは確かなのだ。
だから、仕事就く前は愛読してた「Number」とかも、ここ数年全然読んでない。


奥田英朗といえば、
ドキドキさせられつつも、切なくってキュンとなるクライム小説の名作
「最悪」「邪魔」がやはり代表作だろう。
そして、シリーズ2作目の「空中ブランコ」が直木賞を獲得した、
イン・ザ・プール」のドクター伊良部のコメディ。
ウランバーナの森」や「マドンナ」なども、独特の雰囲気を出していて、
とにかく多彩な味わいを持つ作家だ。
だから、スポーツエッセイでも、面白く読めるかも、と思って、読み始めた次第だ。
最悪 (講談社文庫) 邪魔(上) (講談社文庫) 邪魔(下) (講談社文庫)
イン・ザ・プール 空中ブランコ ウランバーナの森 (講談社文庫) マドンナ


で、まあ、いうまでもないが面白かった。
背表紙にもある、「ボブスレーの2番目の選手は何をしてるのか」
レスリングのタイツはなぜ乳首を出すのか」など、純粋?な疑問から、
「ボクシング世界タイトルマッチの×列目に必ず座っているあの観客が気になる」
(これは昔、僕も相撲で必ず向正面に座ったハゲのおっさんが気になってた)
バルセロナ岩崎恭子ちゃんは父親の抱擁を微妙に拒否していた」
「野球選手のプロフィールに〝故障箇所〟を入れたら面白いのに」とか…
(これも僕の仕事的にはすごく助かるが…)
着想、文章にこの作家っぽいセンスが、にじみ出ていると思う。


まあ、雑誌掲載時期が90年代とあって、ネタは古い。
Jリーグ開幕に、五輪だと、バルセロナアトランタ、長野…
でも、懐かしい名前とか、現象を思い出すと、それはそれで楽しめる。
折しも、アテネ五輪開幕直前&直木賞フェアでそこら中に平積みされているので、
皆々さまにお勧めしたくなった一冊だ。