遅ればせの受賞祝い
祝! 直木賞ということで、長い間本棚に積んであった
奥田英朗「延長戦に入りました」を読む。
祝! とかいって、もうけっこう経ってるな…
それに奥田英朗は僕にとって勝手に好きな作家なだけで、何の関係もないし。
スポーツが題材ということで、読み出す気にあと一歩なれなかった。
大学でスポーツ学専攻、仕事もスポーツ報道、となると、
どうしても余分な知識と思い入れが混ざって、素直に読めなくなる。
「えー、それは知らないだけじゃない」とか、「それはちょっと、勘違いしてるな」とか、
勘違いしてるのがこちらの可能性も高いが、単純に楽しくない、のは確かなのだ。
だから、仕事就く前は愛読してた「Number」とかも、ここ数年全然読んでない。
奥田英朗といえば、
ドキドキさせられつつも、切なくってキュンとなるクライム小説の名作
「最悪」「邪魔」がやはり代表作だろう。
そして、シリーズ2作目の「空中ブランコ」が直木賞を獲得した、
「イン・ザ・プール」のドクター伊良部のコメディ。
「ウランバーナの森」や「マドンナ」なども、独特の雰囲気を出していて、
とにかく多彩な味わいを持つ作家だ。
だから、スポーツエッセイでも、面白く読めるかも、と思って、読み始めた次第だ。
で、まあ、いうまでもないが面白かった。
背表紙にもある、「ボブスレーの2番目の選手は何をしてるのか」
「レスリングのタイツはなぜ乳首を出すのか」など、純粋?な疑問から、
「ボクシング世界タイトルマッチの×列目に必ず座っているあの観客が気になる」
(これは昔、僕も相撲で必ず向正面に座ったハゲのおっさんが気になってた)
「バルセロナの岩崎恭子ちゃんは父親の抱擁を微妙に拒否していた」
「野球選手のプロフィールに〝故障箇所〟を入れたら面白いのに」とか…
(これも僕の仕事的にはすごく助かるが…)
着想、文章にこの作家っぽいセンスが、にじみ出ていると思う。
まあ、雑誌掲載時期が90年代とあって、ネタは古い。
Jリーグ開幕に、五輪だと、バルセロナ、アトランタ、長野…
でも、懐かしい名前とか、現象を思い出すと、それはそれで楽しめる。
折しも、アテネ五輪開幕直前&直木賞フェアでそこら中に平積みされているので、
皆々さまにお勧めしたくなった一冊だ。