不発の鉄槌

mike-cat2004-08-10

ケン・フォレット「ハンマー・オブ・エデン」ISBN:4094054227
〝エデンの鉄槌〟なんだが、どうも消化不良の感が強い。
今回、文庫化されて読んでみたのだが、
長らく平積みされていたとは思えないほど、並の出来のサスペンスだ。


ストーリーは、ざっとこんな感じ。
カリフォルニアの借り上げ国有地に、消費文化を排したコミューンを築き、
ワイン醸造にいそしむ「プリースト」が、ダム建設による水没を逃れるため、
州知事をテロで脅迫する。
その手段が、「サイスミック・バイブレーター」という地ならし機を使って、
地震を起こす、というもの。
FBI捜査官、ジュディは、上司の妨害をかわしながら、テロ集団の摘発に挑む。


まあ、プロットとしては悪くないと思う。
実際、背表紙の紹介文見て、読みたくなったし…。
だが、意外と面白くない。


まず、悪役のエコ・テロリスト「プリースト」の人物造形や、行動パターンが中途半端で、悪役としての魅力が、圧倒的に不足している。
アトピーに悩む子が、コミューンに移り住んだことで、
状態が改善したりする、ナチュラル・ライフ賛歌がある一方で、
そのエコ派のリーダーが簡単に人を殺す。
これをもって「エデンの園」に引っかけられてもなぁ…
エコロジーか、それとも、みたいな矛盾を抱えた現代の状況に、
問題提起するわけでもない。ただ、だらだらと、脈絡のあまりない場面が積み重ねられていく。だから、まったく感情移入できない。


主人公ジュディも、嫌がらせ上司との戦いにいくらかの爽快感はあるが、
テロリストとのリンクがあまり感じられず、こちらも魅力不足。
地震学者、マイケルとのロマンスも、中途半端そのもの。
警察官の父「ボー」も、魅力的なキャラクターだが、こちらは露出が少なすぎて、
ストーリーの盛り上がりに十分貢献してるとはいえない。むしろ、都合のいいお助けキャラクターだ。


その上、話そのものもあまりテンポがよくない。
大幅に脚本変えて、特撮とスター使えば、
まあ、そこそこの映画ぐらいにはなりそうだが、とりあえずあんまり観たくない。
何かなぁ、発想自体悪くないと思うんだが、やはりそこで満足してしまってはいかんのだな、と。


それで、不発の鉄槌。とタイトル打ってみたが、これはこれで不発だな。
まあ、コピーライティングのセンスがあるとは思わないんで、いいんだが…