日比谷シャンテ・シネで「アメリカを売った男」
“職業…FBI捜査官
罪状…二重スパイ
史上最悪の裏切り者、逮捕までの二ヶ月間。”
9・11前にアメリカを揺るがした、
FBI捜査官によるスパイ事件の実話を映画化。
主演は「アダプテーション」のオスカー俳優、クリス・クーパーに、
「クラッシュ」、「父親たちの星条旗」
のライアン・フィリッピ。
共演に「ラブ・アクチュアリー」、「ミスティック・リバー」のローラ・リニー。
「ニュースの天才」で監督・脚本、ジョディ・フォスター主演の「フライトプラン」では脚本を手がけたビリー・レイが監督・脚本を務めた。
FBI捜査官エリック=フィリッピは上司のバロウズ=リニーから、
ベテラン捜査官ハンセンの監視を極秘に命じられた。
疑惑はセックス・スキャンダル―
しかし、敬虔なクリスチャンで、伝統的な価値観を重んじるハンセンと、
バロウズの指令の間に、違和感を感じたエリックは、不満を覚える。
いつしかハンセンに惹かれ始めたエリックに、バロウズはある秘密を打ち明ける。
それは、20年にもわたる、ハンセンのスパイ疑惑だった。
息詰まるような、という言葉がそのまま当てはまるような作品だ。
といっても、派手なアクションはほとんどないに等しい。
そこにあるのは、リアルな諜報戦の、
閉塞感すら感じられるくらい、地道な作業である。
だが、それだからこそこの映画の重厚感はさらに増す。
華やかで颯爽としたスパイは存在せず、
人間対人間の血なまぐさく、どろどろした確執が情報を揺れ動かす。
クリス・クーパーはある意味ベタといえばベタだが、
そのベタさを軽くクリアして、ハンセン捜査官の複雑なキャラクターを演じ上げる。
いつまで立っても青臭さの抜けないフィリッピもきっちりはまり役で、
リニー演じるバロウズの徹底的なFBIくささと対照的で面白い。
地味とは書いたが、派手な動きがないだけで、スリリングさは抜群。
テンポもかなりいいので、すっかりとはまり込んで見られる佳作。
暗さと地味さに忌避感を覚える方にも、ぜひお勧めしたい作品だ。