TOHOシネマズなんばで「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」

mike-cat2007-05-25



パイレーツ・オブ・カリビアン
   /デッドマンズ・チェスト」から10カ月。
〝全世界を熱狂させた空前絶後
 スーパーエンタテイメントシリーズ3部作、ついに完結!〟
前作でクラーケンの餌食となったジャックの行方を追い、
ウィルが、エリザベスが…。またも海賊たちの冒険が始まる―


〝深海の悪霊〟デイビィ・ジョーンズの心臓を入手し、無敵の力を手にした、
東インド会社ベケット卿の暴走によって、海賊たちは窮地に追い込まれていた。
ジャック・スパロウとの三角関係に陥ったウィルとエリザベスだが、
前作ラストでまさかの復活を遂げたキャプテン・バルボッサとともに、
海の藻屑と消えたジャック・スパロウの救出へと、世界の果てへ舵を取る。
ジャックを罠にかけたエリザベス、呪いに囚われた父ビルの救出を目論むウィル…
さまざまな思惑を抱きながら、向かった先はシンガポール
そこには、アジアを牛耳る海賊、サオ・フェンが待ち受けていた―


前作のおさらいをしようしようと思っているうちに、公開日が来てしまった。
情報誌のユルめの見どころだけ目を通し、劇場へ。
せめてパンフレットだけでも目を通そう、と思いきや、激コミで余裕なし。
結局、何となくうろ覚えで本編を迎えることになってしまった。


だが、心配はまさしく杞憂に終わった。
覚えていなければいけないのは、主要キャラクターにまつわるおぼろげな経過くらい。
それすらも、物語が始まってしまえば、あまり関係なくなる。
前作で張りに張りまくった伏線は、確かに今作の物語の軸とはなるが、
それを強引に収束させるための、力技に次ぐ力技で、
ほとんどそれまでのストーリーにたいした意味がなくなってきてしまうからだ。


何しろ、バルボッサの復活に関してはろくに説明もないし、
ジャックも「本当にそれでいいの?」というくらい、あっけなく復活する。
満を持して登場のはずのチョウ・ユンファは、あれあれ…、てな印象。
裏切りに次ぐ裏切りは、意外性の欠片すら感じさせないほどあっさりと描かれるし、
その決着にいたっては、「もう話が押してるから、省略、省略」てなところだろうか。
そんな調子ですべてが進行していくから、169分の尺は、正直やや長く感じることもある。
率直にいえば、3部作の完結編としては、あまりに破綻した作品だし、
あまりにテレビドラマ的なクドい感動描写も目立ち、鼻白む場面も多々ある。


しかし、だからといってつまらないわけではないのが、この作品の特長だ。
考えてみれば、何でもありは過去2作でもお馴染みだし、
それがさらにパワーアップしただけ、と思えばそう目くじらを立てるまでもない。
アクションシーンはますますスケールアップしているし、
どこからどこまでCGかわからない、盛りだくさんの特撮にも見どころは十分。


お馴染みジョニー・デップイカれた海賊っぷりは、
ついに101匹デップちゃん登場という、とんでもない領域にまで踏み出すし、
デップが役作りのモデルにしたあの人物も、ついに登場するおまけ付である。
キーラ・ナイトレイも好き嫌いの分かれる女優だが、
まあ3部作ここまでつき合ってきたのだから、あの受け口もご愛敬というもの。
オーランド・ブルームだって、まさかそうくるか! という意外な活躍ぶりだし、
その他ジェフリー・ラッシュステラン・スカルスガルドら名優たちの演技は、
ドラマ不足はドラマ不足なりに、作品にそれなりの重みを加えてはいる。


過剰な期待など、するべくもないし、3部作の中ではもっとも完成度も低い。
だが、イベント・ムービーと割り切って観れば、観て損した、ということはないと思う。
難しいこといわないで、デップのおふざけを笑い飛ばせば、
数々の瑕疵も許してあげようかな、という気分にもなれるはずだ。
またさらなる続編の可能性すら感じさせる、微妙なラストも気になる3部作完結編。
個人的には、まあ悪くないんじゃない? てな評価でまとめてみたのだった。