松江SATY東宝で「デジャヴ」

mike-cat2007-03-17



〝[デジャヴを、操れ──]〟
製作:ジェリー・ブラッカイマー、監督:トニー・スコット
主演:デンゼル・ワシントン「クリムゾン・タイド」の面々がリユニオン。
デジャヴ(既視感)をテーマに、
サスペンスとアクション、そして××の要素も織り込んだ娯楽大作。
新庄剛志の登場する、ひたすら微妙なプロモーションに、
思わず観る気が失せそうな印象を覚えるが、スコット×ワシントンを信じ、劇場へ出向く。


ハリケーンカトリーナの傷痕も生々しい、ニューオーリンズルイジアナ
マルディグラに湧く遊覧船が、爆破炎上する大惨事で、ドラマは幕を開ける。
捜査に当たったATF(アルコール・タバコ・火器取締局=現BATFE)の捜査官カーリン=ワシントンは、
河岸に打ち上げられた、ひとりの女性の死体に、奇妙な点を見つける。
殺された女性クレアこそ、事件解決の突破口を見込んだカーリンら、
特別捜査班は、驚くべき手段でクレアの過去の捜査に取りかかるのだった―


少々ネタバレ覚悟で書いてしまうと、トンデモ映画である。
荒唐無稽にご都合主義、ストーリーは率直に矛盾と破綻に満ちている。
冒頭からラストまで、突っ込みどころは至るところ満載で、
途中何度吹き出しそうになったか、というとんでもない代物である。
厳格な××ファンやミステリ、サスペンスのファンなら、怒って席を立ってしまいかねないだろう。


だが、そんなムチャなストーリーでありながら、
トニー・スコットの豪腕は不思議なくらい、グイグイと観るものを物語に引き込む。
テンポのいい強引さで、次々と湧く疑問をねじ伏せ、次の展開に持ち込む。
中盤で飛び出す〝飛び道具〟のネタなんて、その最たるもので、
もうまさにトンデモの世界に突入しているのに、何だかスリリングに思えてしまう。


そして、職人スコットは、設定に矛盾や破綻はあっても、ドラマのツボは外さない。
ワシントン演じるカーリンが、殺されたクレアに魅せられ、
どんどん捜査にのめり込んでいく様を、ロマンチックに演出する。
クレアを演じる新鋭ポーラ・パットンの美しさも手伝い、
このふたりのロマンス要素だけでも、十分過ぎるぐらいの輝きを放つ。
ワシントンがやや肥えすぎっぽい印象は否めないが、それはそれで悪くない。


ヴァル・キルマー(「バットマン・フォーエヴァー」「ウィロー」)に、
ジム・カヴィーゼル(「パッション」「オーロラの彼方へ」「シン・レッド・ライン」)、
と主演クラスを並べた豪華な脇役も、映画に絶妙のスパイスを効かせる。
これまた太りすぎ感が漂うキルマーは、なかなかに泣かせるし、
寂しげな目が印象的なカヴィーゼル演じる悪役も、これまた深い。
ワシントンの存在感とのマッチングの妙も、見どころのひとつといえるだろう。


途中までは、単なるミスディレクションかと思わせ、
最後に巧妙に裏切るタイトル「デジャヴ」の使い方もうまい。
細かい説明は省くが、「デジャヴじゃないじゃん!」的な突っ込みは不要だ。
ひたすら怒濤のストーリーに引っ張られ、揺さぶられ、
細かい理由づけはあえて無視して、素直に楽しめば、かなりイケる作品だ。
期待しすぎはもちろん禁物だが、肩の力を抜いて臨めば、意外な掘り出し物に出会えるはずだ。