梅田ナビオTOHOプレックスで「不都合な真実」

mike-cat2007-01-24



〝地球の裏切りか?
 人類が地球を裏切ったのか?〟
アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート、
NY批評家協会賞、LA批評家協会賞受賞作。
いまや人類史上最大の脅威と化した、
地球温暖化に、警鐘を鳴らす渾身のドキュメンタリー。
〝地球を愛し、子供達を愛する全ての人へ──。
 アル・ゴアが半生を捧げて伝える人類への警告。〟


2000年の大統領選で、ブッシュ陣営のインチキにはまり、
〝一瞬だけの大統領〟に終わってしまったアルバート・ゴアの、
ライフワークでもある地球温暖化にまつわる講演活動を、
豊富なビジュアルとともにドキュメンタリーにまとめた意欲作だ。


監督はTVシリーズの「サンフランシスコの空の下」の演出や、
「トレーニングデイ」の製作総指揮をてがけたデイヴィス・グッゲンハイム
(妻は「リービング・ラスベガス」のエリザベス・シュー
一つ間違えばただの説教にもなってしまう内容を、
真摯に、それでいて退屈させない構成にまとめた手腕は高く評価できる。
メッセージ性とエンタテインメント性を両立させた優れた作品といえるだろう。


映画の構成は、世界各地を回りながら、1000回にも及んだというゴアの講演がメイン。
インターネットの普及など副大統領時代の政治的な功績だけでなく、
その人柄でも評価の高いゴアの真摯な語りは、確かな説得力にあふれている。
観る前は「どうせ選挙対策」と思うかもしれない。
だが、そんな低俗なレベルとは違う、真っすぐな情熱が伝わってくる。


宇宙から撮影した、美しき青き地球をバックに語りかけるゴア。
信じられないようなスピードで失われていく氷河や南極・北極の氷、
それが引き起こす地球環境への大きな影響、そして近い将来予想される災害。
確かに、誰しもがおぼろげに知っている内容ばかりだが、
ゴアはそれを、明快なビジュアルとともに〝いま、そこにある危機〟として訴えかける。


映画が進んでいく中で、観る者は、
温暖化が〝まだ間に合うが、事態は緊急を要する〟問題であることを把握していく。
そして、その温暖化の最大の犯人でもある米国に対する厳しい視点、
そんな〝不都合な真実〟を隠そうとする連中の詭弁をことごとく論破していく確かな知識。
バランスを欠いた急進論者との違いは、明らかだ。
もちろん、その指摘は、単なる糾弾だけでは終わらない。
自分たちがどうすべきか、自分たちに何ができるか、の方策もきちんと提示する。


基本的な事実関係や写真はこちらでも閲覧可能だが、
ぜひ多くの人が観ることで、目の前に迫った危機を感じて欲しいと思う。
こうやってブログを書いている間にも、21世紀末までの100年で気温が6度以上、
海面は最大58センチの上昇が見込まれている、なんてニュースが耳に入ってくる。
一度大幅な気候変動が起これば、わずか10年でとんでもない事態になるともいう。
映画作品としても、メッセージとしてもまさに一級品。
まずは斜に構えることなく、そのメッセージを受け止めたいな、と思う。
すこしでも、わずかなことでもいいから…、そう強く感じさせられる作品だった。