TOHOシネマズ六本木ヒルズで「デート・ウィズ・ドリュー」

mike-cat2006-12-16



きょうで東京滞在最終日。それでも映画を観に行く。
だって観たいんだもの。待望の、まさに待望の1本。
〝30日間限定 予算はたったの$1,100
憧れのハリウッドスター “ドリュー・バリモア”とデート出来るか!?〟
夢の実現に向け、突っ走った男の、魂のドキュメンタリーだ。


ブライアン・ハーズリンガー、27歳。金なし、定職なし、恋人なし。
どん底の彼が、クイズ番組で手にした1100ドル(約13万円)。
賞金を手にした彼が思い立ったのは、長年の夢の実現。
6歳の頃からの憧れ、ドリュー・バリモアとのデートだった。
期限は30日、費用は1100ドル。嘲笑も何のその、
あらゆるツテをたどり、さまざまなテを使い、ブライアンの挑戦が始まった−


まず最初に書いておきたい。この映画、間違いなく必見だ。
〝If you don't take risks,you'll have a wasted soul〟
 (リスクを冒さない人生なんて、魂の浪費)
ドリュー・バリモアの熱い言葉で始まる、ブライアンの物語は、
前向きな気持ちとウィット以外は、ごくごく平凡な男の壮大な挑戦であり、
憧れのあの人に想いを伝えたい、一途な男の恋心の行方を描いたラブロマンスだ。


パッと聞くと、バカ企画そのものに過ぎない。
何しろ、夢の実現に走った理由が、クイズの解答が「ドリュー・バリモア」だったこと。
その夢だって、友人からは「世も末だ」と、嘲笑、嘆きの嵐。
ゴシップ誌大好きの母親は「あれはアバズレよ」なんて言い出す始末だ。
30日間、という期限だって、ビデオカメラが買えないばかりに、
安売り店の返品期限の間に映像を撮りきってしまおう、なんて魂胆だ。


だが、ブライアンの夢にかける本気の気持ちが、
そんなバカバカしさの数々を次第にロマンチックな物語へと変えていく。
わらしべ長者よろしく、知人の知人の知人の知人の…をたどっていくブライアン。
周囲の指摘で毛深さやちょい肥満を解消すべく、奮闘するブライアン。
あんなテやこんなテ(それはまずいだろ、というのも…)を使い、
鉄壁の要塞に囲まれたハリウッド・スター、ドリューに近づいていくブライアン。
それは、夢に向かって真剣に進む、ひとりの熱い男の姿だ。


肖像権や著作権などなど権利関係に厳しいアメリカらしい、
さまざまな法律関係の雑務も、細かくは描かれないが、相当の苦労があったはず。
そして、いまの世の中、何よりも怖いのは
〝もし、ストーカー扱いされてしまったら…〟
「101回目のプロポーズ」の時代とは、すべてが違うのだ。
誤解を受ければ、もう〝変人の奇行〟だけでは、すまされない。
だが、友人たちやプロデューサー、トレーナー、そして〝予告編の男〟…
誰もが夢を追いかけるブライアンに共感を受け、無償の協力を申し出てくる。
そんな姿もまた、観るもののこころをグッと熱くさせてくれるのだ。


そして、クライマックス。
ホール&オーツ〝You Make My Dreams〟がかかると、もう、涙が止まらなくなる。
バカ企画だったはずの突撃ドキュメンタリーが、熱い感動を呼び起こす。
それは、日本のテレビなんかが〝演出〟するエセ感動とはまったく違う。
夢、そして恋心がもたらす、切ないまでの熱い想いが、自然に胸を打つ。


そしてあらためて思うのだ。ドリュー・バリモアってやっぱり最高だな、と。
鮮烈な印象を残した「E.T.」などの子役時代から、
酒とドラッグに溺れた10代を経て、「スクリーム」で華麗に復活。
ウェディング・シンガー」や「25年目のキス」などの傑作に出演するだけでなく、
「ドニー・ダーコ」(これも傑作!)や「チャーリーズ・エンジェル」の製作にも関わってしまう才人ぶり。
そして、リスクをかけるにふさわしい、チャーミングな魅力とクールな心意気。
憧れる相手が、そんなドリューだったからこそ、
ブライアンの熱い想いとの相乗効果で、極上のロマンスに仕上がったのだ。


しびれたような感覚で、劇場を後にする。
頭の中にリフレインするホール&オーツ
本当にいいものを観たな、としみじみ思いつつ、東京を後にしたのだった。