川島蓉子 「伊勢丹な人々」

mike-cat2005-06-22



きょうから沖縄。
蒸し暑い。モノレール便利。とりあえず、以上。
で、本は全然関係なく、
言わずと知れた〝欲望百貨店〟(by三浦しをん伊勢丹のお話。
いわゆるビジネス書って嫌いだけど、
伊勢丹と聞いてだまってはいられない。
母親は3姉妹そろって伊勢丹勤め。(そうか、今気付いたが、母は元デパガ)
子どもの頃から、デパートといえば伊勢丹
大人になっても、衣料品、雑貨、食材、ご贈答品に至るまで、
伊勢丹での買い物はかなりの比重を占めていた。(いまは大阪だから…)
もちろん、アイカードだって10%優待♪(年間買い上げ額100万円以上)、
ホントはもっともっと、優待して欲しいぐらい、だったのだ。


「ファッションの伊勢丹」というだけあって、
伊勢丹に入っているお洋服は、
同じブランドであっても、センスのいい商品が並んでいる。
それは、レディースに限らず、メンズでも、だ。
メンズの品ぞろえだけでいえば、他の追随をまったく許さないレベル。
高いけどね。「ISETAN MEN'S」になってからは、
もうお気軽には買えないレベルのものもだいぶ増えたから…
ま、それはともかく、レディースだって、デパート大好きシニア層のみならず、
キャリア・ファッション、おとなの女性向け、20代、10代と、
各層それぞれに一種独特の強みを持っている。
何で知ってんだ、って、
一時期メンズでデニムのサイズがなくて、レディースのデニムを買っていたから。
女装じゃないので、ご安心を、って、別に安心させなくても大丈夫か…。


で、それだけじゃなくって、食品売り場でも、
僕の愛するショコラティエジャン・ポール・エヴァンがあったり、
2週(くらい)で代わるがわるパティスリーを紹介するマ・パティシエがあったり、
パンも、ポールとメゾンカイザーを手堅くおさえていたり…
そして、「サロン・ド・ショコラ」だよ。
だよ、って馴れ馴れしいけど、それぐらいすごいよ、これ。
だって、「もう、どうするばいいのかしら…」と途方に暮れながら、
様々なチョコレートを食べあさっているけど、夢の境地そのものだ。


地下二階のBPQCも、
ヘンなセレクションがたまらないCD店「ボンジュール・レコード」や、
僕の愛用する化粧品ブランドのロクシタン(いまはやたらと増えたけど)、
この前買ってみたらやたらとおいしかったハーブティーのボタニカル…
ホント、欲望百貨店とはよくいったもので、
もう、物欲・食欲・装身欲が、どこまでも果てしなく暴走してしまうのだ。


伊勢丹に洗脳されている、伊勢丹教信者みたいになってきたので、
本の内容に(ようやく)移ってみることにする。遅いよ。
ひとことでいうと、
ファッション系の経済ライターによる、「日経スペシャル ガイアの夜明け」活字版。
ほんの一部をのぞいて、ある意味過去の遺物となりつつある百貨店業界の中で、
ひときわ異彩を放ち、そしてヒトを惹きつける伊勢丹(新宿店のみ、ね)を、
組織・そしてそこに働くヒトという切り口から、分析してみせる。


だが、それだけじゃない。
単なるビジネス本、ということ以上に、読み物として面白い理由は、
まずはこのライターその人が、伊勢丹のファンであること。
もちろん、ビジネス本っぽさも否定できないが、
基本的には、「どうして、伊勢丹に行くと楽しいのか」を、
なるべく客観的にリサーチしていく、潜入リポート(下品な言い回しだが)なのだ。
あくまで、〝なるべく〟がポイントだ。
ビジネス極意書、みたいに理屈に走りすぎないから、
無理矢理な結論、というか、ビジネスセオリーを作ろうとしない。
もちろん、読んでいれば、何で伊勢丹が成功しているか、の理由はわかる。
だが、これを読んだからって、ほかのデパートが、
伊勢丹のようなオリジナリティをを創り上げることは、かなり難しいだろう。


創業当時より「ファッションの伊勢丹」を自認し、
ヒトに投資し続け、築き上げてきた伝統あってこそ、
単に場所貸しだけしている幾多のデパートと違い、
「センスのある」「目利き」のバイヤーを育て上げることができる。
そして、「伊勢丹に行けば、何かがある」と思わせる売り場作りが可能になるのだ。
もちろん、伊勢丹だって、ハズレはあるし、失敗はする。
ただ、その失敗すら、伊勢丹のトンガリっぷりを示す、
ある意味承知の上でのムダだったりもする。
ここらへん、組織としての懐の広さ、も見え隠れしていて、ひたすら感心だ。


そんな、まあ小理屈は抜きにして、伊勢丹ファンが
「ああ、そういうのあったなぁ」とか、
「いまのあの売り場には、こんな歴史が…」みたいな、想いに浸れる
伊勢丹めぐりのサブテキスト的な側面もこの本にはある。
むしろ、僕的にはそっちの方が楽しめた部分は大きいかな。
「ISETAN MEN'S」の前身「男の新館」がオープンした当初は、
実は世界的にも珍しいメンズ専門館だったとか、トリビア的なお楽しみも随所にある。
また、「ほかのデパートに飽き足らないけど、
青山とか代官山あたりをいろいろ見て回るのはちょっと…」というヒトにも、
ぜひにお勧めしたい本でもある。いや、本を読まずに伊勢丹直行でもいいが…
えらそうに書いちゃうけど、そこにはきっと、何かがある、はずだ。
まあ、もいちどしつこく書くと、お値段の方も、それなり…なんだけどね