悪夢から抜け出せ!「わが手に雨を」

おもしろいことは確かだけどね

グレッグ・ルッカ「わが手に雨を」。ISBN:4163233601


ポートランドオレゴンをホームグラウンドにする人気急上昇中のバンド「テイルフック」。
そのギタリスト、ミムはアルコール依存症と、子供の頃の事故の記憶に悩まされている。
ツアー中に突然、バンドを一時解雇され、失意の帰郷を果たしたミムを待っていたのは、
不可解な不法侵入事件、長らく断絶状態にある父の釈放、そして…
張りめぐらされた罠、悪化するばかりの状況。
人生から逃げ続けてきたミムが、ついに立ち上がる時が来た。


この、グレッグ・ルッカ
「守護者(キーパー)」など、ボディーガード、アティカスのシリーズで定評のある作家らしい。
守護者 (講談社文庫) 奪回者 (講談社文庫) 暗殺者 (講談社文庫)
読んだことなかった。講談社文庫の海外物って、外れた時のダメージ大きすぎるから…
しかし、これから読む必要あり、かも。必要、じゃないかな。読みたい、でいいのか。


基本は巻き込まれ型のジェットコースター小説だ。
バンドの一時解雇で始まった悪夢が、どんどん膨らんでいく。
誘拐、不法侵入、ネットでの写真ばらまき、脅迫…
どうしたらいいのかわからない、混迷感が伝わってくる。
悪趣味だな、とは思うが、読んでいてドキドキしてしまう、不思議な感覚だ。


だが、それだけでは終わらない。
ハロウィーンの季節に、母を事故で亡くした、
その、幼い頃の事故の記憶が、物語のキーとなっている。
父との断絶、兄の抱えていた秘密が次第に明らかになる過程で、
ミムが人生を取り戻していくのが、切なくも心地いい。


まあ、読み終わっての余韻はさほど残らない。
というか、どこが「わが手に雨を」なんだか、よくわかんなかったりもする。
映画でいえば、そこそこ出来のいいハリウッド・サスペンス。
そこそこの期待には応えたけど、それ以上じゃなかった、という感じ。
文藝春秋のハードカバーって、ハズレがないからつい買ってしまったが、微妙だな。
文庫で出てれば、文句なしのおすすめだけど、ハードカバーではどうかな、とも思う。
重くて持ち歩くの大変だし。
こうして書いてると、ナニを偉そうに、とも思うんだけどね。