このクセだけは、許せない…

mike-cat2004-08-08

角田光代「太陽と毒ぐも」ISBN:4838714998
オビは「大好きなんだけど、どうしても我慢できないことがある。」
そう、恋人の「許せない習慣、性癖」をモチーフにした、短編集だ。


ざっと並べただけで、かなりすごい。
「3、4日、平気で風呂に入らないスマコ(♀)」
「迷信、ジンクスを異様に気にするハルっぴ(♀)」
「買ったら買いっぱなしの通販マニア、リョウちゃん(♂)」
「誰にでも開けっぴろげに何でもばらすナミちゃん(♀)」
「何でも記念日にして、お祝いしないと気が済まないクマコ(♀)」
「行動のすべてを巨人戦の勝敗にかける敦士(♂)」
「どうしても万引きがやめられないカナエ(♀)」
「食事はすべてスナック菓子の仁絵(♀)」
「酒を飲まずにはいられない、まさしく酒乱のアヤちん(♀)」
バックパッカー的旅行を、彼女に強いる吉男(♂)」
「ウソつきで浮気者のミネオ(♂)」

端的に言えば、すべてレベルというか、限度の問題なんだけど、
それを言っちゃうと話が続かないので、一般論として…


しかしなあ、「記念日のクマコ」なんて、かわいいぞ♪
何で「クマコ」か、やや、気になる部分もあるが…
「酒乱のアヤちん」なんかは、けっこう暴れたりするけど、基本は楽しい酒。
小説では、飲めない恋人との軋轢が描かれているが、
相手がある程度呑めれば、ヒステリックに文句いう問題じゃないし…


微妙なのが「迷信、ジンクスのハルっぴ」だな。
「夜、爪を切るな」ぐらいならともかく、
「服に針を通した直後に出かけると、交通事故に遭う」のため、
遅刻直前でも、「一度床に寝そべって、一晩寝たことにして」出かける。
急ごうよ、と促すと、泣き叫ぶ。「あたしが事故にあってもいいの!!」
泣き叫ばれると、なぁ…


誰にでもばらすナミちゃんもなあ…
悪気全然ないだけに、どうしていいのやら、とは思うけど、
真から嫌いにはなれないだろうな。
折り合いつけていけば、何とか、と打開策を探っていこうかな、とは考えると思う。
最終的な局面でどうか、は難しいけど、まあ二人の関係がふだんから充実してれば、
さほど困ったことにもならないだろうし(想像力不足?)


まあ、風呂はいらない、万引き、食事全部スナック菓子は無理だな…
スナック菓子は、ぎりぎり、短い期間で限定の恋人なら、くらい。
ああ、オトコ連中の行動・性癖はすべて、
問題外にイヤなことばかりだから、全部失格。
その上、こういうオトコ、けっこう普通にいるから余計イヤ。
というか、自分が女の子だったら、絶対に何があっても付き合わない。
あっ、でも買いっぱなしの通販マニアは、ややまずいかも。
通販じゃないけど、買いっぱなしの物が部屋にけっこうある…


とまあ、色々考えてみたくなる本なわけで、そこにこの短編の味があるかな、と。
一つ一つの短編はけっこうあっさりで、掘り下げた部分は特にないが、
こういう感じで、どうかな、これは許せるな、
とか考えながら読む、たたき台としては最高だと思う。