早過ぎるさくら見物に出向く。

mike-cat2005-03-30

開花情報はまだつぼみと咲き始め、ぐらいだけど、まあよしとする。
まずは腹ごしらえと、
六本木ヒルズにもある「TO−FU CAFE FUJINO」北野店でランチする。
実はお初。ヒルズでは都合100回は前を素通りし続けてた。
ランチプレートや、昼御膳はなかなかの品ぞろえだった。
比較的シンプルな構成だが、豆腐のお味はなかなか。
ここまでチェーン展開してるのに、意外とていねいな作りだ。
エビ餅を使った変わり揚げ出し豆腐と、あんかけ豆腐がナイス♪
デザートも豆乳プリンにとうふ白玉と、しっかり2品いただいた。
スタッフの方がのんびりしすぎの感はあるが、まずまず満足…かな。

梅が散り際の北野天満宮から、〝咲き始め〟情報のあった平野大社へ。
数十種類、1000本とかがウリだが、やはり、まだ早過ぎた。
しだれっぽいのが一本、2分咲きから3分咲き。
それでも、春っぽい陽差しの中で見るさくらは格別だ。
かなり肌寒いのも忘れ、しばし見とれる。


京福電鉄で嵐山へ向かう。
何年ぶりか、よく覚えていないけど、駅に着いてびっくり。
えらくきれいになって、おまけに足湯までできてる。
大繁盛してるし、タオルとかの準備もないのでとりあえず、眺めるのみ。
しっかし、本当にこぎれいな感じにまとめてる。
もちろん、真の意味での風流とか、粋は感じないが、
ベンチもたくさんあるし、観光地としては上出来かも。


まずは定番、渡月橋へ。
途中右手に、美空ひばり記念館を発見。
ここらへんの〝商店街〟自体、あまりに醜悪な観光地然としているので、
あまり細かいことを言ってもしかたないが、
これはさすがに景観保護条例とかで制限すべきでは?


天竜寺、竹林、常寂光寺と回り、
さあ、トロッコ電車と思ったら、4時半すぎで終電…
ロクに調べずに来ると、ままあることだが、
「いや、別にすごく乗りたいワケじゃなかったもん…」と、
これまた、ままある子供みたいな言い草で自分を納得させる。
最後に和菓子「老松」で、桜もちとわらび餅。
どうもトロいな、と思ったら、大違い。注文してから作ってくれる。
お味? わらび餅は70点だったけど、桜もちは85点。まずまず、でしょ。


結局、京福電鉄四条大宮へ向い、やや遅めの錦市場見物で締める。
6時前だと、やはり半分がた〝本日終了〟。
ま、しかたないんで、いわゆる〝薩摩揚げ〟のてんぷらを大量購入。
もちろん、家で食べ残す。考えて買いましょう。
あとはいつも行くお麩のお店で麩まんじゅうと、かやく入りのお麩を購入。
エビとサトイモ、鴨あんと百合根、うなぎ、の3種。
こちらはお吸い物仕立てでいただいた。
ちょっと濃厚すぎるんだけど、これはこれでおいしかった。


そうそう、帰り際に新京極の三条寄りで新装開店の「MOVIX京都」を見かける。
老朽化した劇場が多かった京都だけに、けっこううれしい。
可能なら、単館系の映画も上映して欲しい。
そしたら、京都に行くついでに映画観に行く機会も増えそうだ。

吾妻ひでおの壮絶「失踪日記」

大収穫をこころに刻み、京都から帰ると、アマゾンで購入した
吾妻ひでお失踪日記」が到着していた。
朝日の書評で読んで、即注文したやつだ。


吾妻ひでおというと、黄金時代の少年チャンピオン、だろうか。
ただ、売れっ子作家時代、の吾妻ひでおには、僕はあまり縁はない。
むしろ、ヘンだけど何だかすごい、という作品を、
何だかよくわからない雑誌とかにちょこちょこ載せていた、
ポップでシュールなマニアックな漫画家のイメージがむしろ濃い。
ファンの評価に比べて、マーケット的には、不遇の作家だと思う。
ロリータもの、のイメージもちょいとあったし…。
というわけで、熱心な読者というわけではないし、
単行本とかも、過去に数冊買ったことがあるだけ。
失踪したらしい、というニュースは聞いていたけど、
別にその後どうしたんだろう、と気にかけてたわけでもなかった。


しかし、失踪時代の実録もの、と聞いては買わずにはいられない。
僕が口にするのもおこがましいが、
〝あの〟吾妻ひでおの実録「失踪日記」を読み逃すわけにはいかないのだ。
絵は、往年のポップな感じそのまま。
著者自身、「極力リアルさを排除した」と書き記してある通り、
かなりやばい状況も、いい感じに脱力して描いている。
だから、よくある〝こんなに悲惨だった〟自慢の実録漫画とは全然違う。
そう、切れ味抜群のシュールさで、こちらの脳細胞に迫ってくる。


もちろん、ギャグの切れは申し分ない。
きっちりとエンタテイメントに仕上げている。
天ぷらの廃油や、〝野生の〟ダイコンで飢えをしのぎ(いや、ド×ボ×だけど…)、
凍死寸前の〝関節の筋肉が収縮して、メキメキ、バリバリ音を立てる〟。
悲惨きわまりない状況を、笑いに転化させている。
もちろん、当時はとてもじゃないが笑えなかっただろうけど、
作品世界に持ち込む際のフィルターのさじ加減は、やはり〝さすが〟だ。


ホームレス(この言葉はあまり好きではないんだが…)編と、
ガス工事の下請け編、アル中編と、よくわからない迷走ぶりも、
かつて不条理マンガの旗手として活躍した吾妻ひでおならでは?
肉体労働していると、芸術したくなり、
ガス会社の社内報にマンガを投稿(寄稿、じゃなく…)しちゃったり、
ミジメに感じてしまうツボが、何ともいえず微妙だったり…


まあ、そんなところも笑えるところが、この作品の魅力ではある。
ガス工事編はともかく、ホームレス編とアル中編は
実際の状況を考えると、シャレではすまないのはよく理解できる。
でも、ここは著者の意志を尊重して、素直に笑っちゃうのがベストかと。
別に、僕自身が迷惑こうむったわけでもないんで、
目をつり上げて、どうこう言うべきでもないと思うし。
で、結論。万人向けとはいわないが、
吾妻ひでお、という名前に少しでもピンとくる人名なら、間違いなく必読の書。
かつての名作の数々も、ぜひに再訪してみたいものだ。