TOHOシネマズ六本木ヒルズで「ランボー 最後の戦場」

mike-cat2008-05-30



“1982年 アメリカ 自らの尊厳のため
 1985年 ベトナム 幾多の戦友のため
 1988年 アフガニスタン 唯一の理解者のため
 そして2008年 ミャンマー さらば ランボー
前作「ランボー3/怒りのアフガン」から20年、
ロッキーに続いて、こんどはランボーが還ってきた。
シルヴェスター・スタローンが自らメガホンを握り、
シリーズの集大成として完成させた戦闘アクションだ。


ベトナム戦争グリーンベレーとして戦ったジョン・ランボーは、
アメリカを離れ、タイ北部のジャングルで静かな生活を営んでいた。
ボート屋とヘビの捕獲で生計を立てるランボーのもとに、
アメリカのキリスト教支援団体から、ある依頼が飛び込んだ。
ジェノサイド(民族虐殺)の危機にあるカレン族を救うため、
軍事政権の圧政下にあるミャンマーに潜入するという危険な仕事だった―


感動の第1作、さらにスケールアップした第2作に、
当時中学生だった頃、大興奮した記憶はいまも新鮮に残っている。
ただ、第3作となるとちょっと話が別で、
あまりの荒唐無稽さに少々げんなりしたというのが正直なところ。
その後スタローンは一気に落ち目になるし、
一方で国際情勢は目まぐるしく変化し、
ランボーが活躍できるような場所と状況は、見つけるのが困難になった。


何しろ、かつて戦ったソ連はなくなり、
支援したムジャヒディーンの成れの果てが、アルカイダとなってしまった。
そんな時代にわざわざランボーを再び甦らせる。
ましてや、アメリカの正義の在り方も問われている時代。
ぐだぐだになっていたシリーズを見事に復活させ、
そして見事なフィナーレに持ち込んだ「ロッキー・ザ・ファイナル」の成功がなければ、
とても観る気にはならないような、続編映画である。


はたして…とスクリーンに目を向けると、
いきなり飛び込んでくるのはミャンマーの軍事政権が行った、
数々の圧政、虐殺、そして人権蹂躙のニュースのフッテージ
そして、「プライベート・ライアン」と肩を並べる、
圧倒的なまでに残虐な戦闘シーンと、虐殺シーン―
どうやら国際社会が見て見ぬふりをしている問題に対し、
スタローンなりのやり方で声を上げようということらしい。


エンタテインメント映画である以上、
避けることのできないご都合主義もあって、
メッセージ性という意味では微妙な部分もあるが、それはそれ。
それに近しいことがミャンマーで行われているであろう事実を考えれば、
観る者に多少なりともこの問題について考えさせる契機になる。
北京五輪を目前に控えた中国の大地震に隠れて、
はるかに多くの被害者を出したミャンマーのサイクロン被害と、
軍事政権の横暴のニュースが減りつつあることを考えると、
日本公開はまことにいいタイミングではあるかもしれない。


理屈の通じない相手が牛耳る戦闘地帯に、
丸腰で乗り込んでいこうという支援団には、
思わず「自己責任論争」を思い出させられるが、
まあ少なくともこの作品の支援団は医師なので、
違和感は残しつつも、何とかストーリーに入っていける。
それでも、それがもたらした結果を考えると、
志は尊いが、やはりこの支援団には感情移入できないので、
全体的な映画そのものにも、そのノレない感はつきまとう。


ランボー自身の身の振り方、という意味でも、
それなりに伏線も張って語られるのだが、こちらはやや強引。
いつも通り、ドカーンドカーンと怒りを爆発させているだけで、
最後のシーンでジーンとこさせるには、やや説得力が足りない。


とはいえ、アクションそのものはお好きなヒトにはたまらないレベル。
少々どぎつい描写も多いが、ある意味リアルな部分でもある。
まあ、シリーズ3作目まで観ちゃったヒトには、
その落とし前をつけてもらうために、観てもいい一本だろう。
ま、ロッキーと違い、積極的にお勧めはできないが…