TOHOシネマズ六本木ヒルズで「ランボー 最後の戦場」
“1982年 アメリカ 自らの尊厳のため
1985年 ベトナム 幾多の戦友のため
1988年 アフガニスタン 唯一の理解者のため
そして2008年 ミャンマー さらば ランボー”
前作「ランボー3/怒りのアフガン」から20年、
ロッキーに続いて、こんどはランボーが還ってきた。
シルヴェスター・スタローンが自らメガホンを握り、
シリーズの集大成として完成させた戦闘アクションだ。
ベトナム戦争でグリーンベレーとして戦ったジョン・ランボーは、
アメリカを離れ、タイ北部のジャングルで静かな生活を営んでいた。
ボート屋とヘビの捕獲で生計を立てるランボーのもとに、
アメリカのキリスト教支援団体から、ある依頼が飛び込んだ。
ジェノサイド(民族虐殺)の危機にあるカレン族を救うため、
軍事政権の圧政下にあるミャンマーに潜入するという危険な仕事だった―
感動の第1作、さらにスケールアップした第2作に、
当時中学生だった頃、大興奮した記憶はいまも新鮮に残っている。
ただ、第3作となるとちょっと話が別で、
あまりの荒唐無稽さに少々げんなりしたというのが正直なところ。
その後スタローンは一気に落ち目になるし、
一方で国際情勢は目まぐるしく変化し、
ランボーが活躍できるような場所と状況は、見つけるのが困難になった。
何しろ、かつて戦ったソ連はなくなり、
支援したムジャヒディーンの成れの果てが、アルカイダとなってしまった。
そんな時代にわざわざランボーを再び甦らせる。
ましてや、アメリカの正義の在り方も問われている時代。
ぐだぐだになっていたシリーズを見事に復活させ、
そして見事なフィナーレに持ち込んだ「ロッキー・ザ・ファイナル」の成功がなければ、
とても観る気にはならないような、続編映画である。
はたして…とスクリーンに目を向けると、
いきなり飛び込んでくるのはミャンマーの軍事政権が行った、
数々の圧政、虐殺、そして人権蹂躙のニュースのフッテージ。
そして、「プライベート・ライアン」と肩を並べる、
圧倒的なまでに残虐な戦闘シーンと、虐殺シーン―
どうやら国際社会が見て見ぬふりをしている問題に対し、
スタローンなりのやり方で声を上げようということらしい。
エンタテインメント映画である以上、
避けることのできないご都合主義もあって、
メッセージ性という意味では微妙な部分もあるが、それはそれ。
それに近しいことがミャンマーで行われているであろう事実を考えれば、
観る者に多少なりともこの問題について考えさせる契機になる。
北京五輪を目前に控えた中国の大地震に隠れて、
はるかに多くの被害者を出したミャンマーのサイクロン被害と、
軍事政権の横暴のニュースが減りつつあることを考えると、
日本公開はまことにいいタイミングではあるかもしれない。
理屈の通じない相手が牛耳る戦闘地帯に、
丸腰で乗り込んでいこうという支援団には、
思わず「自己責任論争」を思い出させられるが、
まあ少なくともこの作品の支援団は医師なので、
違和感は残しつつも、何とかストーリーに入っていける。
それでも、それがもたらした結果を考えると、
志は尊いが、やはりこの支援団には感情移入できないので、
全体的な映画そのものにも、そのノレない感はつきまとう。
ランボー自身の身の振り方、という意味でも、
それなりに伏線も張って語られるのだが、こちらはやや強引。
いつも通り、ドカーンドカーンと怒りを爆発させているだけで、
最後のシーンでジーンとこさせるには、やや説得力が足りない。
とはいえ、アクションそのものはお好きなヒトにはたまらないレベル。
少々どぎつい描写も多いが、ある意味リアルな部分でもある。
まあ、シリーズ3作目まで観ちゃったヒトには、
その落とし前をつけてもらうために、観てもいい一本だろう。
ま、ロッキーと違い、積極的にお勧めはできないが…